
有機栽培のお茶と露地栽培のお茶はどちらを選ぶべきですか。
お茶を専門にしているとよく質問されるのですが、私自身もどちらが良いのか、その都度考えてしまいます。
質問の意図にもよりますが、今回はお茶を愉しむという観点から私が普段からお話していることをお伝え出来たらと思います。
結局結論は『どちらにもいいところがある』です。
これはあくまでも私の考え方です。
何かしらの参考になれば幸いです。
有機栽培のお茶と露地栽培のお茶
有機栽培とは無農薬栽培のことを言います。
農薬や化学肥料を一切使用していない点では安心であると言えます。
健康を意識する人や、子供が口にするものはいいものがいいという方は迷わず選ぶのではないでしょうか。
一般的には安全に越したことがないと考え、有機栽培のお茶のほうが良いと思われがちですが、一概にそうとも言い切れないのではないかと私は思います。
先に露地栽培の説明を少しだけしておきます。
有機栽培の逆で、農薬も化学肥料も使用される、こちらも一般的なお茶です。
農薬を使用している点では少し安全面で不安になるところもあるでしょうが、私たちが普段スーパーなどで購入している野菜や果物にも例外なく農薬や化学肥料は使用されています。
そして現在は昔と違って、露地栽培でもより安全にと農薬や化学肥料の量を少なくするなど工夫がされてきました。
露地栽培も、昔ほど不安になることはないというのが私の感じた印象です。
有機栽培の難しさ
有機栽培と聞くと安全でよさそうですが、現実的なことを考えると少し大変なところがあります。
理由としては、
①有機栽培の手間と、農家間での問題。
②有機栽培のお茶の希少性と価格
③有機栽培は栽培の環境によっては味や香りがあまりよくない
少し説明をすると、
①の理由は、手間と時間がかかりすぎて手が負えなくなることがあります。
それに加え、害虫などの問題で近隣農家に嫌がられるという問題があります。
②の理由は簡単で、有機栽培はのお茶はそれほど多くなく、露地栽培のお茶より高価であることが多いです。
③の理由は、手に負えない農家が自然農法と言って、雑草を取り除くこともせず自然のまま栽培します。
いい意味で自然の味ですが、自然のちからだけでは味や香りがしっかりしてこないというデメリットがあります。
中には手間をかけて有機栽培をする農家がいますが、そのような農家のお茶を探すのはとても難しいです。
安全であり、一見良いところばかりに見える有機栽培ですが、こうした問題がまとわりついてくるのです。
ちなみに、下記のお茶は有機栽培で私が美味しいと感じたお茶農家のお茶です。
茶園は宮崎県の高千穂にあり、遠くに阿蘇山が見えるとてもきれいな場所でした。

いろいろなお茶を飲んで経験することが大事
私の師匠が教えてくれたことに経験をしていくことの大切さというものがあります。
その人は露地栽培のお茶は一切飲みません。
農薬や化学肥料を悪とし、一貫して有機栽培のお茶だけを正義だとしていました。
もちろん、農家の問題やお茶業界のことを熟知したうえで貫いている考えであり、自分の提供するお茶の味にぶれが発生しないための考え方でもあります。
ある種の道義のように感じます。
その人が教えてくれた、いろいろなお茶を飲み、自分にあったお茶を探すことが大切であるという考えです。
私の師匠もかつて数えきれないほどのお茶を飲んできて出た答えが有機栽培のお茶でした。
そうやって自分のお茶を貫くこともいいですし、シーンによっていろいろなお茶を飲み分けることも私はいいと思います。
私自身まだまだ発展途上ですが、できるだけたくさんのお茶を飲むように心がけています。
有機栽培のお茶のよさ、露地栽培のお茶のよさ、もちろん双方に悪いところや足りない部分もあるかもしれません。そういったこともたくさんのお茶飲んで経験することで自然と理解できるようになってくるのだと私は思っています。

難しいことは考えずにお茶を選ぶ
結論、難しいことを考えずにいろいろなお茶を試していくことが大切なのかなと思います。
私にお茶を教えてくれた人の半分は有機栽培のお茶を貫いていましたが、私自身いろいろなお茶を飲んで勉強をしています。
それが楽しいのです。
露地栽培のお茶に使われる農薬や化学肥料も昔より量が減ったり、安全性を考えられたものに変わってきています。
何度も言うようですがあまり神経質にならずに飲んでみようと思ったお茶は飲んでみる、それでいいと私は思います。
そうすればおのずと自分にとってベストなお茶の向き合い方がわかってくると思います。

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